お墓の価格(値段・費用)の仕組みと相場|④石材の価格(後編)
石材の価格について(後編)
お墓の価格のうち、石材の価格について引き続きご説明致します。
お墓の価格は非常に複雑であるため、どうしても分かりにくくなってしまいます。
本投稿は、お墓の価格について詳しく知りたいと考えており、以下のような疑問をお持ちの方の役に立てると思います。
- 8寸のお墓と9寸のお墓、どれくらい価格が違う?
- 和型と洋型、どっちが安いの?
- 石碑本体の方が外柵の方より安いことがあるの?
- 高い墓石は、なぜ高いの?
- 花立や香炉の形が違うと、値段が変わるの?
当店にお越し下さったお客様から頂く質問の、代表的なものを挙げさせていただきました。
これらの疑問が少しでも解消できるよう、「石材の価格」についてご説明させて頂きます。
◆◆◆お墓の価格についての参考となる投稿は、こちらからどうぞ◆◆◆
【お墓の価格(値段・費用)の仕組みと相場|①概要】
【お墓の価格(値段・費用)の仕組みと相場|②墓地の永代使用料】
【お墓の価格(値段・費用)の仕組みと相場|③石材の価格(前編)】
【お墓の価格(値段・費用)の仕組みと相場|⑤工事の価格】
石材の価格は、3つの部材で決まる
墓石は以下の図に示す通り、大きく3つの部材に分かれます。
本投稿ではそれぞれの部材について、順を追って具体的にご説明させて頂きます。
ここで本題に入る前に、石材の価格を決める5つの要素について簡単におさらい致します。
- 石材の量・・・お墓に使う石の量が多いほど高く、少ないほど安い
- 石材の種類・・・希少な石材ほど高く、たくさん採れる石は安い
- 加工の場所・・・日本国内加工は高く、中国加工は安い
- 加工の形状・・・複雑な形状ほど高く、簡単な形状ほど安い
- 仕入れルート・・・中国の工場から直接仕入れた方が安い場合が多い
この内、仕入れルートについては各部材において特に違いは無いため、省略させて頂きます。詳しくは【お墓の価格(値段・費用)の仕組みと相場|③石材の価格(前編)】をご覧ください。
1.石碑
1-1.石の量
石碑の大きさや構造が違うと、石の量が違い、価格も異なります。
例えば8寸2段和型の墓石と、9寸2段和型の墓石とを当店が定める標準の大きさで比較します。
(※8寸2段和型とは、竿石(さおいし、石碑一番上の石)の幅が8寸(=約24cm)で、その下に2つの台石がある和型墓石の事です。)
すると9寸2段和型の墓石の方が、8寸2段和型の墓石よりも、石を25~35%多く使用しています。
つまり石材の価格は、9寸2段和型の方が25~35%高くなります。
一般的に和型の場合は、8寸よりも9寸の方が高く、9寸よりも尺(=10寸、約30cm)の方が価格は高いです。
しかし、実はそうではない場合もあります。
同じ8寸2段和型でも、大きさが違うと価格が違う
こちらは当店の工場内の写真です。2基のお墓を背中合わせに組み立てておりますが、どちらも「8寸2段和型」です。
左側が、当店では標準のサイズでして、右側はご施主様のご希望で、台石を小さく加工したものです。
同じ「8寸2段和型」でも、このように大きさが違うと、使用する石の量が違うため価格が異なります。
8寸2段和型の定義は、竿石(さおいし、石碑の一番上の石)の幅が8寸で、その下に2つの台石がある和型墓石ですので、どちらも名称は「8寸2段和型」となります。
台石の大きさは石材店の考え方等によって大小あるため、同じ墓石を比較しているようでも、実は違うものを比較していることの方が多くなってしまいます。
見えない所に使う石
見えない所に使う石の量が多い場合もあります。
まず最初の例として、石碑に凹凸をはめ込む加工を付ける場合です。以下をご覧ください。
当店でも地震対策としてこのような加工を採用していた時期がありました。しかし、どうしても石の量が多くなるために費用が掛かってしまいます。(強度の上がることには間違いないのですが、費用対効果はあまり良くないと思います)
近年ではコストパフォーマンスに優れる地震対策施工法が開発され、費用の掛かる加工をしなくとも大地震でも倒れない強度を得ることができますので、今は当店では採用していません。
実際にはめ込む加工をした写真は以下の通りです。黄色の矢印で示した所は、組み立てると見えなくなります。
以下の写真は、その下の台です。上の写真の物がこちらにはめ込まれます。
見えない所に使われている石の別の例としては、当店では納骨室に一枚石を使っています。この一枚石の納骨室も、お墓が完成すると見えなくなる所ですが非常に重要な部材です。
お墓が建つとこちらの様になります。建てた後では見えなくなる部分です。お墓には、見えない所に石が使われていることもあります。
納骨室をコンクリートでも作ることができます。コンクリートの方が費用は抑えられます。しかし当店では、費用が掛かっても一枚石を使う方が良いと考えています。
費用を抑える事も重要ですので、不要なものは無くし大切なものは残すよう、コストパフォーマンスが高くなる方法を採用しています。
関東では納骨室を2段や3段の棚のように大きく作ることがあります。納骨室が広くなると、お墓本体よりも納骨室に費用が掛かる場合もあります。
1-2.石の種類
【お墓の価格(値段・費用)の仕組みと相場|③石材の価格(前編)】で多くを述べさせて頂きましたので、まだ読んでいらっしゃらない方は、こちらから読んで頂くことをお勧めします。
墓石に使用される石の種類は100種類以上もあり、石材そのものの価格を比較すると、最も高い石は最も安価な石の10倍以上します。現時点では、最も安価な石は中国産で、最も高価な石は日本産です。
また一部の石材では、同じ名前の石であっても「等級」が違うことにより価格差が2倍以上となる場合があります。「等級」の高い石ほど目が細かかったり、色が濃かったり、希少価値が高かったりと理由は様々です。
石の種類が違うと、見た目で一番差があるのは石の色です。白っぽい石を使うのか、黒っぽい石を使うのか、石の色によってお墓の雰囲気は全く異なります。
仏教の教えとしましては、白色の石でも黒色の石でも大丈夫なのですが、風水を気にされる方にとっては、黒っぽい石はダメだとされていますのでご注意ください。
当店周辺では、グレー系の石がお墓らしいということで、1番人気があります。
1-3.加工場所
石碑の加工場所は、大きく分けて日本国内か、海外かの2通りです。
日本で建てられるお墓のうち、少なくとも80%は中国で加工されています。(2015年時点)
それほど、中国では日本向けの墓石加工が盛んです。加工費が安いために、日本の石を中国まで運び、再び日本に運びます。運搬費を差し引いても、中国の加工が安いということです。
こちらは中国へ検品に行った際に撮った工場の写真です。
複雑な形状の石碑ほど、日本加工と中国加工との価格差は大きくなります。蓮華台をつけたり、銀杏面と呼ばれる特殊な面取り加工をしたり、大名墓など装飾をたくさんしたりするほど、価格差が大きいです。
逆に曲面が無かったり、花立てや香炉がシンプルな角型なお墓だと何十万もの差が無い場合もありますので、シンプルなお墓を建てる場合は日本加工もお勧めです。
ただし日本の石を中国で加工することは良くありますが、外国の石を日本で加工することは少ないので、日本で加工したい場合は日本の石から選ぶのが、費用対効果が良いと思います。
1-4.加工形状
前にも触れましたが、石碑の形状が複雑なほど加工費が高くなります。
複雑な形状とは、曲面が多いことや、細かな加工が多い形状の事です。
- 曲面が多い事
- 彫刻などの加工があること
- 蓮台があること
- 銀杏面という特殊面取りがあること
- 花立や香炉に曲面が多い
こちらは日本の工場でまっすぐな平面な箇所を加工している所です。平面であれば、こちらの写真の様に大きな機械で加工し研磨できますので、加工費が安くなります。
一方でこちらは、日本の工場で花立を加工している所です。工具を手に持って、手作業で丁寧に石を加工し少しずつ曲面を作っていきます。
このように日本で加工する場合はシンプル見える形であっても、曲面が多い場合だと手作業が多くなり加工費が高くなることがあります。
曲面の加工には非常に時間が掛かるので、簡単そうに見えても実は費用がかかるという事もあります。
2.外柵
2-1.石の量
外柵に使う石の量が多いほど、価格は高くなります。以下のようなポイントが、石の量には大きく効いてきます。
- 墓地の広さ
- 外柵の種類
- 外柵の高さ
- 入口の有無
- 上から見た外柵の厚み
墓地が広いと石の量が増えるというのは単純です。
一方で、例えば外柵の高さなどは注意が必要です。高さを150mmにする場合と、300mmにする場合とでは石の量が2倍違います。墓地が広くて外柵高さが高い場合は、石碑より外柵の方が高くなることもあります。
外柵の高さは、隣の高さに合わせる場合や、お参りしやすいように石積などをして高くする場合や、予算を抑えるため高さを抑える場合があります。
お客様とご相談しながら、ご希望を伺いながら決めていくことが多いです。
上から見たときの外柵の厚みについて
こちらは、2か所の墓地を上から見た図です。
左側は、当店周辺では一番多いサイズの12cmです。
右側は、9cmです。
当店では12cmにすることが多いのですが、墓地の横幅が狭い場合や、価格を少しでも抑えたい場合などには厚みを薄くします。
ただし、薄くした場合の全体的な見栄えの変化も重要ですので、価格と見た目とのバランスをとりながら寸法を決めて頂ければと思います。
こちらの写真では、右の外柵と左の外柵とで高さも上から見た石の幅も大きく異なります。どちらが良い、悪いというのではなく、よく検討して決めることが大事だと思います。
2-2.石の種類
外柵の石の選び方にも、色々とありますので、その一例を以下に示します。外柵に使う石の種類が変わりますと、価格が変わります。
- 最も安価な中国産の石
- 石碑と同じ石
- 石碑に似ていて、石碑より安価な石
- デザイン性を出すための、石碑とは違った色の石
- 日本の石で安価なもの
2-3.加工場所
石碑の場合と同様に、日本または海外で加工されます。海外の場合は中国で加工されることが、ほとんどです。
単純な形の場合は、たとえ日本で加工しても中国加工と同程度の価格です。
2-4.加工形状
以下に挙げるような複雑な形状の外柵ですと、加工費が多く掛かる場合があります。
- 銀杏面と呼ばれる特殊な面取り
- 影彫り等の特殊加工
- 曲線の多い外柵
- 門柱をつくり、そこに家紋をはめ込む加工
- 墓誌や塔婆立が一体となる加工
こちらは、外柵に施された銀南面加工です。曲面の面取りに小さく段を付けた加工です。
3.付属品
3-1.石の量
付属品は全てのお墓に必要なものではありませんが、宗旨宗派によっては必要なものや、ある方がより良いものです。
代表的な付属品は以下の通りです。
- 墓誌(墓標、霊標などとも言う)
- 墓前燈籠
- 塔婆立
- 物置台
- ちょうちん立て(当店周辺地域)
他のお墓とは違う雰囲気にしたい場合は、墓前燈籠などを置くと、ガラッと雰囲気が変わったりします。
ちょうちん立ては、当店周辺地域の習慣で、お盆にちょうちんを飾るための付属品です。このような雰囲気になります。
地域によっては、お盆に爆竹をするところもあるようで、全国それぞれに様々な習慣があります。
3-2.石の種類
付属品の石の種類は、石碑の石と同じにすることや、外柵の石と同じにすることが多いです。
例えば墓誌に使う石の種類は、石碑と同じ石を使うことが多いです。
3-3.加工場所
石碑や外柵と同様に、日本と海外(中国など)で加工されます。
墓前燈籠などは加工に手間が掛かりますので、中国で加工する場合と日本で加工する場合で、価格に開きがあります。
こちらは岡崎市の石燈籠を専門とする伝統工芸士さんです。細かな細工まで非常にきれいで、その技術は圧巻です。
3-4.加工形状
複雑な形ほど、価格は上がります。墓誌に屋根をつけたり、塔婆立を五輪塔のような形にするなど、いろいろな形の付属品があります。
また、当店周辺でよくある墓前燈籠には、角型と丸型があります。角型の方がきりっとした雰囲気で、丸型は少し柔らかい雰囲気になります。
価格としてはどちらも大体同じくらいですが、角型の方が丸型よりも少し安いです。
角型の方が作るのが難しそうに見えるので高そうと言う方も多いのですが、丸型は上から見てきれいに円になるように加工しますので、丸型の方が価格が上の場合が多いです。
おわりに
最後までお読み頂きありがとうございました。
お墓の価格のうち、石材の価格についてご説明させて頂きました。いかがでしたでしょうか。
石材の価格を詳細にお伝えするため、石碑の価格、外柵の価格、付属品の価格と分けて述べさせていただきました。
今回述べさせていただいた中から、いくつかポイントをピックアップさせて頂きます。
- 8寸のお墓と9寸のお墓では、25~35%ほど価格が異なる
- 和型と洋型、どちらが安いかは、ケースバイケースである
- 花立や香炉の形が違うと、値段が変わる
- 石碑本体の方が外柵の方より安いことがある
- 墓前燈籠は丸型より角型の方が安価
何かご不明な点や分からないことがありましたら、お気軽にご連絡ください。
◆◆◆お墓の価格に関するその他の情報は、こちらをどうぞ◆◆◆
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